東京地方裁判所 昭和54年(ワ)12233号 判決
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【判旨】
四原告の本訴請求は、被告が訴外会社の委託に基き、東京手形交換所に対する異議申立をなした際提供した金三一五万円の異議申立提供金は、昭和五五年一一月一三日、二年の期間満了により被告に返還されるものであり、これに伴い、訴外会社の被告に対する金三一五万円の預託金返還請求権の履行期も同時に到来するので、本訴でこの支払いを求めるというにある。<証拠>によると、被告が東京手形交換所に提供した異議申立提供金は、同交換所規則第六七条により、被告に返還されるものであり、遅くとも同条第一項四号により、被告が異議申立をした昭和五三年一一月一四日から起算して二年を経過した場合には被告に返還されるものである。そして被告の訴外会社に対する預託金返還債務の履行期も、被告が右のように異議申立提供金を東京手形交換所から返還を受けた時に到来すると解すべきであるから、原告の本訴請求は将来の給付の訴えというべきである。
ところで、本訴において、将来の給付についてその請求をあらかじめする必要があるか否かについて検討するに、被告が本訴で原告の請求を争つているのは、履行期が到来していないこと。本件の預託金返還請求権について、訴外会社の債権者である訴外株式会社藤金からも金三一五万円で仮差押えがなされ差押えが競合していることから、自己の責任において原告にのみ支払うわけにいかないこと。右のような場合、被告には民事訴訟法第六二一条一項により供託する権利があるので、異議申立提供金の返還があつた場合には、このような措置をとる必要があると考慮していることにあること。又、本訴請求の目的物は、金三一五万円の金員で必らずしも多額とはいえず、被告が金融機関でこれに見合う金員は現実には確保されていて将来現実の履行を必要とした場合、その履行をしないであろうというおそれが殆どないことと、反面、原告が履行期に履行を受けなければ意味がなかつたり、甚大な損害を蒙るおそれがあるとは認められないこと。更らに、将来の請求をする必要があると認められて原告の請求を認容するとしても、主文で認められるのは「被告が異議申立提供金の返還を受けた時は、金三一五万円の供託手続をせよ。」との一部認容の判決(民事執行法第一五七条四項。)であることを考えると、本訴では将来の給付の訴の利益があるとはいえない。
五そうすると、原告の本訴は訴の利益を欠き、不適法というべきである。
(岡田潤)